ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ
遠山日出也
京都府労働委員会のあっせんの結果、以下の点で合意し、和解が成立した(原文の形式とは少し異なると思いますが、(1)〜(3)の謝罪の文言などは原文どおりです)。
WAN理事会は、ユニオンWANに以下の3点を謝罪する。
(1)平成21[ママ]年12月に組合員遠藤礼子の仕事を外したこと、その後、事務所の閉鎖及び突然の2人の退職勧奨に至ったこと。
(2)それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと。
(3)これまでの労使のやり取りの中で組合に対して不適切な言動があったこと。WAN理事会はユニオンWAN組合員2名に解決金40万円ずつを支払う。
ユニオンWAN組合員2名は円満退職する。
tigrimpa(ユニオンWANの遠藤礼子とカサイの分担執筆)「【速報】WAN争議解決【勝利和解】」2010年5月12日。
yamtom「WAN争議、勝利和解!」ふぇみにすとの論考2010年5月12日。
WAN理事会「WANを支えてくださっている皆様へ」WAN-NEWS 16号……その中の「情報開示に関しての方針」では、WANサイト上で争議について説明をおこなわなかった理由を述べる。
tigrimpa(ユニオンWAN)「謝罪は誰のため」2010年5月14日。
tigrimpa(ユニオンWAN)「5.12理事会文書について」2010年5月18日。
tigrimpa(ユニオンWAN)「あっせんの結果の説明について」2010年5月19日……労組が謝罪の内容を発表したことが「労働委員会の禁止に背いている」かのような理事会の主張は、明らかな事実誤認であることを述べる。
遠山日出也「WAN理事会の『情報開示に関しての方針』について」2010年6月18日……理事会の方針を批判。
watarlooさんは、WAN理事会の「情報開示に関しての方針」をtwitter上で批判(2010年5月17日)。
WAN理事会(の代理人の弁護士)「5/17 内容証明郵便物」2010年5月22日=ユニオンWANのブログの記事は「名誉毀損」だから、削除と謝罪をしろ、誠意ある対応がなければ「断固たる法的措置を執る」と言う。和解での謝罪内容の(1)(2)は「これまでも繰り返し謝罪してきている」内容だという、事実と異なる記述も。
tigrimpa(ユニオンWANの遠藤礼子とカサイの共同執筆)「迷走!WAN理事会、恫喝訴訟を予告!?」2010年5月22日。
tigrimpa(ユニオンWAN)「5/17内容証明郵便物への回答」2010年5月22日。
遠山日出也「道理がないWAN理事会の主張、理事会は今回の謝罪を生かした行動を」2010年5月30日。……理事会が「あっせんで合意した事項は公開してはならない」と主張していることや理事会の「通告書」の記述をさまざまな点から批判、謝罪を今後に生かす行動を求める。
遠山日出也「WAN総会に出席して」2010年6月22日……理事会は、和解内容のうち、解決金の額も発表したが、謝罪についてだけは口を閉ざした。謝罪内容とは矛盾した文書の訂正や撤回も拒否した。
yamtom「WAN総会レポ感想」ふぇみにすとの論考2010年6月22日。
遠山日出也「WAN理事会への3通の手紙――WAN争議における謝罪=反省点の表明を求めて」2011年5月10日……WAN理事会に対して、1.ユニオンWANに謝罪した内容をWAN-NEWSなどで公表し、今後はその点について注意するむね表明すること。2.遠藤さんに送付した「通告書」が不適切であったことを表明することなどを提案したが理事会は受け入れなかった。
遠山日出也「第2回WAN総会」(←左クリックした場合は、別のページに移動します)……総会の場でもWAN理事会に上記の点を提案したが、理事会は受け入れなかった。
遠山日出也「WAN争議が提起した課題と現在のWANの問題点」2012年2月4日……現在のWANの問題点として、ボランティアの状況、会の内部の意見交換・民主主義の不十分さ、サイトの双方向性の乏しさ、非営利団体や市民運動の「内部」の労働問題に対するWANの姿勢などを取り上げた。
遠山日出也「WANの第3回総会とシンポに参加して」2012年5月31日……総会の時間が1時間半に延長されたこと、私の発言と理事側の答弁(サイトの双方向性の拡大、投稿規程の字数とジャンルの緩和などを要望、組織運営の透明性)、「ボランティアでは限界、専従を」という声が出たこと、など。シンポジウム「女がつなぐメデイアーミニコミからウェブへ」については、「ウェブは個人発信が簡単にできる」という特色にもっと注目することが必要ではないか、と思った(関連資料:「私のボランティア申し込みメール(←左クリックした場合は、別のページに移動します)」1月18日、「投稿規程に関する要望(←左クリックした場合は、別のページに移動します)」4月11日)。
山口智美・斉藤正美・荻上チキ『社会運動の戸惑い』(勁草書房 2012年10月刊行 「フェミニズムの歴史と理論」サイトの特設ページ参照)が、その313-318頁(山口・斉藤執筆個所)で、WANに対して一定の評価をしつつも(上野氏らの世代のフェミニズム学者がウェブ発信を開始したこと、フットワークの軽さなど)、WANのさまざまな問題点を指摘した(バックラッシュに対抗する内容が乏しい、双方向性や論争の欠如、投稿者への負荷が高い、ミニコミ電子アーカイブ化事業の問題、労働問題など)。
遠山日出也「WAN『コメント投稿規程』に関する意見」2013年5月22日→遠山日出也「『コメント投稿規程』に関する私の意見に対するWANの回答」2013年6月2日
遠山日出也「第4回WAN総会とシンポジウムに参加して」2013年8月5日
「WAN運営組織(2013.8現在)」……この点を公表することは、第3回、第4回総会でも上野理事長自身も懸案として述べてこられた事項だった。
●中村設子「『家政婦さん』に頼るのは贅沢?〜スペインエッセイ連載 第7回目」←移民の家政婦の状況に対する視点が欠落していることへの批判。「女性の連帯」で言う「女性」とは?という疑問、こうした記事にコメント欄がないことへの批判なども(yamtom/山口智美2013年11月10日 - 7:20、はねた2013年11月10日 - 8:05、同11月10日 - 7:52、SHIMIZU Akiko(清水晶子)2013年11月10日 - 16:49、yamtom/山口智美2013年11月10日 - 8:20などのツイートからたどっていただいたり、http://wan.or.jp/reading/?p=12648の検索結果など参照)。
●お助けWAN「キャリア相談室」「(相談No13)50代で今更正規雇用は無理でしょうか? (回答)あなたが望んでいるものは『身分』ですか? それとも『仕事』ですか?」←回答が雇用者側の視点のものであることへの批判。労働相談でなく「キャリア相談」であることへ疑問、WANサイトには「食うことに困ったことがない」雰囲気があるという感想なども(yamtom/山口智美2013年11月10日 - 8:54、Yu.2013年11月10日 - 9:00、青さん、ご主人様は頑張りません。2013年11月10日 - 13:37、SHIMIZU Akiko(清水晶子)2013年11月10日 - 16:24、NaGiSa_FuJiKI2013年11月10日 - 20:14などのツイートからたどっていただいたり、http://wan.or.jp/help/career/?tag=no13の検索結果など参照)。
以下は、和解成立後に起きた、WAN争議と間接的に関係のある出来事です。
あるジェンダー系メーリングリストにおいて、フェミニズムに力を注いでいる某法律事務所が頻繁に出した募集広告に対する質問が発端となって、その事務所の労働条件(賃金、労働時間、雇用者の態度など)が話題になった。しかし、当時WANの理事であった(のち理事長)上野千鶴子氏は、そのような質問や議論をやめるようにお願いするメールを発信した。
macska「女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?」*minx* [macska dot org in exile]2010年11月20日。
macska「女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(2)」*minx* [macska dot org in exile]2010年11月26日。
山口智美「『女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?』をめぐる議論」ふぇみにすとの論考2010年12月1日。
macska「女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(3)」*minx* [macska dot org in exile]2010年12月2日。
macska「女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?(4)」*minx* [macska dot org in exile]2010年12月3日。
山口智美「『女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?』をめぐる議論その2」ふぇみにすとの論考2010年12月5日。
マサキチトセ「『女性とマイノリティと労働者を支援するブラック企業?』をめぐる議論 マサキバージョン」フェミニズムの歴史と理論2010年12月6日。
ホットココア「沈まぬ太陽」WAN裏方日記2011年1月10日。
yamtom「WAN裏方日記とボランティア、労働運動」ふぇみにすとの論考2011年1月13日。
yamtom「WAN裏方日記へのトラバが削除された」ふぇみにすとの論考2011年1月16日。
discour「フェミニズム・サイトのメディア戦略はオープンマインドに」ジェンダーとメディア・ブログ2011年1月19日。
ホットココアさんとしては、『沈まぬ太陽』に出てくる企業とWANとは全然異なると考えておられるのだろうが、トラックバック自体を切ってしまうのはどうか?